レトリック(修辞法)

 レトリック(修辞法)とは、表現を豊かなものにするための技法です。「ことばの彩(あや)」と言われますが、この「彩」のことを指します。

 レトリックは言葉のお化粧であるとも言えます。

 お化粧をするのは、見る人に注目して欲しい、という気持ちが働いているからです。同じように、レトリックが使われている箇所は「ここをよく見て欲しい!」という作者の意志がこめられています。

 ですから文学的文章は、レトリックを手がかりにして読解を進めることができます。

 当然、授業中や定期テストでは、修辞法が関わった問題や課題が必ず出されています。また、2017年度の長野県公立高校後期入試では、修辞法の名前を答える問題が出されました。

 中学校で出てくる修辞法は、そう多くはありません。修辞法の種類と用法をきちんと整理し、身につけておきましょう。


比喩

 文章で「何か」を説明したり描写したりする時、その「何か」と同じ性質を持つ「別の何か」に「たとえ」て表現する技法です。

 文学的文章では、何に例えられているかはきちんと書かれていますが、何を例えているか、例えているものと例えられているものにはどんな共通点があるかは書かれていないことがほとんどです。そしてこの「何を例えているか」「どんな共通点があるか」こそが、登場人物の心情と密接に関係し、高校入試や定期テストに出題されることが多いようです。

 比喩が使われている箇所をきちんと発見し、そこに隠れている登場人物の心情をきちんと書けるようにしておきましょう。

 

 比喩には、次のものがあります。

 

直喩(明喩)

「~のような」などを使って、ある事物を他の事物にたとえる表現法。

    (例:「鬼のような顔」…表情の怖さを鬼にたとえている。)

隠喩(暗喩)メタファー

「~のような」などを使わずにたとえる表現法。

    (例:「こんなに宿題を出すなんて先生は鬼だ。」…先生の厳しさを鬼にたとえている。)

換喩

それと関係深いものを代用してたとえる表現法。

    (例:お年玉は、野口英世より福澤諭吉の方がよい。…お札の種類とお札に書かれている人物にたとえている。)

 

体言止め

体言(名詞)で終えることで余韻などを感じさせる表現法。

    (例:「わたしはカモメ。」)

 

省略法

―(ダッシュ)や…(リーダー)などで、文章や会話の一部を省略することにより、余韻を残し、読者に続きを連想させる表現法。

    (例:「あいつほどいいやつはいなかった。…なのになぜケンカなんかしたんだろう。」)

 

倒置法

述語に対する主語や修飾語などの順序を逆にして、その句を強調させる表現法。

    (例:「ついに完成した、巨大な絵画が。」…完成したことを強調している。)

 

擬人法

人間でないものを人間の言動で表現して喩える表現法。

    (例:「おひさまが笑ってる。」…天気の良さを、機嫌が良い人間の表情にたとえている。)

 

擬態法

擬態語や擬音語・擬声語を用いた表現法。

    (例:「ワンワン」と鳴き声がした。…犬を表現している。)

 擬態語は様子を、擬音語・擬声語は音や声をあらわす言葉です。上の例の「ワンワン」ですが、これは日本語のものです。英語では「バゥワゥ(bow-wou)」、中国語では「ウーウー(wu-wu)」と鳴きます。ですから、擬態語や擬音語・擬声語は、本当の犬の鳴き声を日本語の音(おん)にたとえたもの、と考えています。

 擬態語や擬音語・擬声語は、文法的には副詞です。

 

反復法

同じか、似たような語句を繰り返す表現法。

    (例:「松島や ああ松島や 松島や」…松島の美しさに感動した様子を表現している。)

 


これ以降は、古典や漢文によく出てくる修辞法です。教科書の文章では、出てくる場所が限られていて、定期テストでは必ず出題されますから、チェックしておきましょう。

対句法

類似の構造を持つ二つの句を重ね用いる表現法。

    (例:「青い空、白い雲。」)

平家物語や漢詩で出題されますから、確実に覚えておきましょう。

 

反語

実際の主張を疑問の形で書き、強い否定を表す表現法。

    (例:昔は美しい町だったとしても、誰が信じるだろうか。(いや、誰も信じないだろう。)

 

押韻(おういん)

詩歌などで同じ音を決まった場所で繰り返し使う(韻を踏む)こと。

短歌や漢文に多く出てきます。