長野県の高校入試

高校のブランド

 長野県の“あるある”に、「出身大学ではなく出身高校を尋ねられる」というのがあります。なぜでしょう。

 長野県は昔から「教育県」と言われてきました。そのため知的レベルの優劣を競う傾向が他より強くあったのでしょう。しかし大学に行こうとしても戦後まもなくできた信州大学があるだけで、都会の大学に行く他ありませんでした。首都圏や関西・中部地方に散在する大学を比べようにも、今のように偏差値ランキングのようなお手軽な物差しはありませんから、簡単に比べることはできません。それよりも地元の高校で比べるほうが分かりやすかったのではないでしょうか。

 それ以上に、親子代々同じ高校に通うことを希望する家庭が多いことからもわかるように、自分の出身高校に誇りを持っている親が常にいたのでしょう。自分の出身高校の自慢の中から、現在に見られるような“輪切り型”の高校の序列が生まれてのではないかと思います。

 現実はどうでしょう。全国学テを学力の物差しとすると、長野県は決して優秀な成績を出す県ではありません。各通学区のトップ校である長野高校や松本深志高校も、偏差値ランキングでいくと二流の域を出ません。これは田舎だからではありません。東北出身者の東大進学率は長野県よりずっと高いのです。つまり、“長野県は「教育県」”と言われたのは明治時代の話で、現在では幻想に過ぎないのです。(だいたい、全国学テ上位の県と比べ、家庭教育に熱心な家庭、学校教育に協力的な家庭がそんなに多いとも思いません。)

 高校のブランドに惑わされて、自分の実力と異なる高校に進学しても、高校生活は苦しいものになるでしょう。みなさんには、高校名に惑わされることなく、幸せな高校生活をおくることができる、ベストマッチの高校を自分の目と耳とで探して欲しいと思います。