モアイは語る―地球の未来


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問題提起文とその解決文を探そう

 問題提起文とは、

  • 筆者が話題にしている問題や課題を、疑問形などで解決すべき事項として読者に投げかけた文

です。

 問題提起文は、文章全体や段落の最初にあることが多く、その問題を解決する文(解決文)が必ず書かれていなくてはいけません。

 この文章の場合、問題提起文は、第2段落にまとまって書かれています。

  • いったいこの膨大な数の巨像を誰が作り(①)、あれほど大きな像をどうやって運んだのか(②)。また、あるときを境として、この巨像モアイは突然作られなくなる。いったい何があったのか(③)。モアイを作った文明はどうなってしまったのだろうか(④)。

 ①、②、④に対応する言葉が、それぞれ第3段落、第7段落、第13段落にあります。同じ意味の言葉が使われていますね。

  • ①誰が作り→第3段落「巨像を作ったのは誰か」
  • ②どうやって運んだのか→第7段落「どのようにして~運んだのだろうか」
  • ③何があったのか
  • ④文明はどうなってしまったのか→第13段落「どうなったのだろうか」

 ③に対応する段落はありませんが、それぞれの解決文を考えると、対応する段落がわかります。

 問題提起文に対応する解決文は、それぞれの段落のまとまり(大段落・意味段落)の最初の方か最後の方に書かれます。

  • ①=第3段落「ポリネシア人」
  • ②=第10段落「ヤシの木をころとして使い、完成したモアイを海岸まで運んだ」
  • ④=第15段落「十七世紀後半から十八世紀前半に崩壊した」

 ここから、段落のまとまりを考えると、次のようになります。

  • ①=第3~6段落=モアイは誰が作ったか
  • ②=第7~10段落=モアイをどのようにして運んだか
  • ④=第13~15段落=モアイを作った文明はどうなったか

 この分け方でいくと、第11~12段落が残されています。ここが③にあたるのです。そこで次のように考えることができます。

  • ③=第11~12段落=何があったのか=「森が消滅した結果、海岸までモアイを運ぶことができなくなった

筆者の主張に納得したら負け

 この文章は、読者を説得する文章です。筆者は何を主張し、納得し、賛成して欲しいのでしょう。

 文章の最後に

  • 私たちは、今あるこの有限の資源をできるだけ効率よく、長期にわたって利用する方策を考えなければならない。それが、人類の生き延びる道なのである。

とあります。これが主張でしょう。

 本当でしょうか。

飢餓地獄は起こらない

 筆者は第20段落で、イースター島と地球とを対比し

  • 絶海の孤島-森林資源が枯渇-飢餓に直面-食糧を運んでくることができなかった
  • 青い生命の島-森を破壊し尽くした-飢餓地獄

と説明しています。イースター島で「食糧を運んでくることができなかった」に対応する部分が地球の方にはありません。

 確かに、地球の外から食糧を運んでくることはできませんが、筆者は食糧を地球外から運び込む以外に飢餓を回避する方法を知っています。

  • 食糧生産に関しての革命的な技術革新がないかぎり(第19段落)

 筆者は、このことを既に知っているからこそ、「食糧を運んでくることができなかった」というイースター島の部分を地球と対比しなかったのでしょう。

森林破壊だけではイースター島の文明は滅びない

 第20段落に「森林資源が枯渇し、島の住民が飢餓に直面した」とありますが、それでイースター文明が滅んだとは書いてありません。イースター島文明が滅んだ理由については第15段落に次のように書いてあります。

  • こうして、イースター島は次第に食料危機に直面していくことになった。その過程で、イースター島の部族間の抗争も頻発した。そのときに倒され破壊されたモアイ像も多くあったと考えられている。このような経過をたどり、イースター島の文明は崩壊してしまった。

 「このような経過」とはどのような経過なのでしょう。「このような」は、上に示した部分、あるいはそれ以前の論の展開全部を指しています。

 イースター島の文明が崩壊してしまった直接の原因は「部族間の抗争」です。人口爆発と森林破壊による食糧危機が、肥沃な土地と漁場をめぐっての部族抗争を生んだと言われています。モアイは部族のシンボルなので部族間の抗争では「モアイ倒し」が盛んに行われていたようです。

 ですから、現在の研究では次のように書くのが正しいと考えれます。

  • こうして、イースター島は次第に食料危機に直面していくことになった。その過程で、イースター島の部族間の抗争頻発した。そのときに倒され破壊されたモアイ像多くあったと考えられている。その結果、イースター島の文明は崩壊してしまった。

 確かに森林破壊(森林がなくなったのは焼き畑農法が原因だという説もあります。とすると筆者の「伐採」という表現は使えません)により土地が痩せ、船なども造ることができなくなった結果食糧危機が訪れたといえるでしょう。しかし直接の原因は部族間の抗争であったと考えられています。

 また、数百年後ヨーロッパ人が到達したときは生活水準は石器時代並となっていたそうですが、イースター島文明が死んでしまったわけではありません。最終的にイースター島文明を崩壊させたのは、ヨーロッパ人による奴隷狩りと、彼らにもたらされたインフルエンザや天然痘、ペストなど疫病ためだとされています。

 実際はどうだったのか、またその結果どうなったのかは、言い伝えしかなく実はよくわかっていないのが現状です。

筆者は「森林が破壊されると文明が崩壊する」とは言っていない

 文章を細かく分析してみると、筆者は単純に「森林破壊→食糧危機→文明の崩壊」と主張してはいません。しかし読者がそのように理解(誤解)するような論の展開をしているのです。

 更に、20段落では「今あるこの有効な資源」と、話題を森林資源から一気に広げてまとめてしまっています。

 確かに石油やレアアースなど部族間の抗争(現代では「国家間の抗争」と言い換えてもよいでしょう)のもとになっています。また「資源」という言葉を自然由来のものと考えなければ、技術などを含めた人的な資源もあります。

 「できるだけ効率よく、長期にわたって利用する方策」は、石油やレアアースなどを考えると、筆者の主張通り、現在世界中でそうなるように努力しているのかもしれません。しかしそれ以上に部族(国家)間の抗争が「文明」を滅ぼしかねないことが心配ですね。また人的資源で「効率よく長期にわたって利用」という感覚はどうなんでしょう。

筆者が主張したいのはエコサイド説

 イースター島で森林を破壊した結果、文明が滅んでしまったという説は「エコサイド(ecocide=環境虐殺)説」と呼ばれるものです。これはイースター島文明の崩壊の理由を説明する仮説なのですが、無謀な開発と環境破壊に警鐘をならすエピソードとして知られています。

 しかし、この説ついては現在いくつかの反論が出ています。

 例えば「モアイは歩かせて移動させたので、ころを使ったのではない。」というハワイ大学の研究もあり、「モアイが歩く」動画も公開されています。また、森林資源が枯渇したのは、モアイを造るためではなく、無計画で行われた焼き畑農法のせいだと考える人もいます。

 つまり、森林破壊が原因でイースター島文明が滅んでしまったというわけではない、というわけですね。

 

 自然保護が間違っている、というわけではありません。「今ある資源を大切に」というのも、その通りだと思います。

  • 誰かが書いたものを、深く理解しようとせず、考えもせずに、その通りだと思ってしまう

 私は、これこそが文明の崩壊を招く原因だと思いますよ。

 身の回りにある「あなたを説得しようとする文章」に気をつけて、それが正しいかどうか、しっかり自分の頭で判断できる人間になってくださいね。

 


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